1歳から100歳の夢

この仕事の制作物

装丁

色んなことを知らなかった分、
ほとんどが実験だった。

初めてデザインした本、「1歳から100歳の夢」の文庫化にあたり、
本の比率なども変わるためデザインし直すことになった。
当時ブックデザインのあれもこれも、今よりはるかに知らなかったため、文字組も本の構成もいろんな本を見て真似したり、真似でき損なって、味になったりした。書体の名前も全然知らなかったので、本屋で気に入った本を見つけては、その出版社に電話をかけて使っている書体を聞いたりした。(多くの出版社はめんどくさがって教えてくれなかったが、ときどき親切に折り返しの電話をくれる場合もあった)インクジェットのプリンターしか持っていなかったので、100人分のゲラを刷るのもひと苦労。色んなことを知らなかった分、ほとんどが実験だった。だからこの本は実験の集大成。

編集のメンバーのことに少し触れる。
「1歳から100歳の夢を集めた」、言葉にすると簡単な一言だけど、彼らは自分の足で集めて回った。本をセールスするためではなく、夢を集めるために“出張”していた。特にお年寄りから夢を集めるのがたいへんで、介護のようなことまでしたという話もある。
そういう集める苦労に比べると、自分たちデザイナーはパソコンと机の上で実験しているだけなので作業が深夜に及んでも、たいした苦労と思えなかった。そういうわけでとても気に入っている本のため、基本的にそのままの印象を残しつつ、デザインし直した。本文の文字組にあたっては、丸井栄二デザイン事務所に依頼させてもらった。1−100歳の夢たちも、やっと本格的に文字組してもらえて嬉しいだろう。

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