Dream, don’t sleep

この仕事の制作物

装丁 
写真

だいたい人の眠っている姿は優しい。
こわいおじさんも犬も眠っているときはかわいくみえる。
読んでもらえそうだと思った。

この仕事は大学の職員のためと、そして広報のために作られることになった。
最近の教育機関は「目標を持とう」「夢を持とう」「将来のためのキャリア教育」とひっきりなしに語っている。 結果として学生は「夢」という言葉がキライになったり「進路」という言葉におびえたりしているのが現状で、 自分がやりたいことが見つからないことに対して、必要以上に不安になったりもしている。

ではそれを子どもに言っている大人の方はどうなのか、「夢」はあるのか、子ども達は聞きたいのではないかと思った。 お手本を示せと学生らは言っている。学生の頃の「夢」は多くの場合「職業の名前」のことを言う場合が多いけれど、すでに仕事をしている人たちの夢は何かな?という素朴な疑問もあるだろう。 どんな仕事でもそうだろうけれど、キャリア教育という旗を振って仕事している人は自分自身が誰より「夢」と 向き合っていてほしいと思う。
そこには理想と現実のギャップもあるだろうし、プライベートと仕事の狭間で揺れる自分もいるだろう、しかしそれでも向き合い続けないと、それを教育する資格なんてないはずだ。

ブックデザインを始めるにあたって、真面目に作りすぎるといけないと感じた。
「夢」のように、言葉にすると胡散臭くなりがちなものを扱うのに真面目にやってしまうと、 かっこつけすぎたり、なにかの新興宗教みたいになったりしそうなので、どう崩すかということに頭を使った。内容が濃く正しいものである場合の多くは、その伝え方に気を遣わなければならない。 でないと絶対的な正義の押しつけみたいになってしまい、読んでもらえない。 とはいえ、お笑いにするわけにもいかないというところで 悩んだ末に、出たアイデアが、とてもシンプルな寝てるときに見る「夢」と合わせてみようと思った。瞬間、頭に浮かんだ絵が大学の教授や事務局の人がパジャマ姿で撮影されている様子、タイトルはDream don’t sleep. たったこれだけを思いついた時点で、もうできたと思った。パラパラとめくると、いい齢した大人がパジャマで寝ている写真、その横には起きているときにみる「夢」のテキスト。それだけで素晴らしい本の予感がした。

だいたい人の眠っている姿は優しい。 こわいおじさんも犬も眠っているときはかわいくみえる。読んでもらえそうだと思った。 自分の頭の中で、完成していたが、担当者にこの話をしてみると彼らは口々にこう言った。「いや~そんなことやってくれないですよ」「パジャマはともかく、マクラを持ってきてもらうのはムリでしょう」 その後数回の打ち合わせで、こちらが不安になることを何度も言われたが、 折れることなくしつこく「お願いするしかないでしょ」と言い続けた。一体どうなることかと、とても不安になりながら迎えた撮影当日、 1人目の教授はまくらの代わりにうなぎを穫る道具を持ってやってきて、ドカンと寝転んだ。

2人目はスーパーマーケットの袋を持参でやってきて、セロリや人参を床に並べはじめた。 インスタレーションのようだった。来る人来る人色んな演出を用意していて、始まる前の不安はどこかに飛んでいき、 次は何がくるかなという期待に変わっていった。ぼくはこの撮影で生まれて初めて、パジャマの帽子を見た。 自分が考えたことだけど、皆がそれを勝手に解釈して楽しんでくれて、参加してくれて、こちらの想像以上のものになった。 そういえばここは芸術大学だったなと思った。

この本が学生募集に直接繋がるかどうかは分からないが、それより一緒に働く人同士がお互いのことを少しでも知ることは、 関係性の発展に繋がるだろうし、また学生らにとっても自分を教える先生の人間味や、 事務局で世話をしてくれる大人の違う表情をみることができるいい機会になったはずだ。 (この機会をつくるために、大学で最もお金を持っている学生募集の予算を利用させてもらったというのが正直なところ)

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